「奇跡の話芸」三代目三遊亭円馬

 

 

 

円馬を聴く

筆者が聴いた事のある円馬のCDは、今のところ「六尺棒」と「権助提灯」だけである。いずれもSP盤時代のレコードがもとになっているため、雑音が多く聞き取りずらい。しかも録音時間に制限があったため、大変短い口演になってしまっている。それでも円馬という人がどんな話し口調であったかということは分かるようになっている。

「六尺棒」は、商店の旦那が夜遊びばかりする若旦那に腹を立て、玄関を閉めてしまい息子が入れ無くなってしまうことから騒動が始まるおなじみの話である。自分が悪いくせに親父に締め出された息子は腹を立て、火事だ火事だと夜中に大騒ぎ。怒った旦那は六尺棒を片手に玄関を開けて飛び出し、息子を追い掛け回すのだが、ここのやり取りが面白い。逆切れした息子は「この牛半ダース」と親父を罵る。「なんだ牛ハンダースというのは」と聴くと「”もうろく”ってシャレだいべら棒め!」というのだが、これは円馬の考案したくすぐりだろうか?いずれにせよこのレコードが録音された大正時代、もう「半ダース」という言葉が存在していた事になる。

六尺棒を持った親父に追いかけられながらも息子は「マーラソン競争なら俺のほうが負けねぇ」と言う。ダッシュで駆け出しているからマラソンでは無いが、この時代、既にマラソンと言う言葉はポピュラーだったようだ。親子の立場が入れ替わる前半と後半の対比が楽しい噺で、円馬はこれを6分間で演じている。

「権助提灯」は、こちらは大家のご主人にお妾さんがいて、風の強い夜に本妻宅と別宅を一晩中、行ったり来たりするお話。登場人物は旦那さん、本妻、妾、そして提灯を持って主人の往復を先導する、権助の4人である。円馬はこの4人をキッチリ演じ分け6分間でサゲまで演じている。権助には田舎言葉を使っている。

 

 

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