過去のコラム

2004年4月7日

フリーペーパー 

先日、ニューヨークの新聞のお話をしたが、他にもニューヨークにはローカル色豊かな新聞がいろいろある。最近お馴染みになって来たのが、am New York という新聞である。通勤時間帯の地下鉄車内では、この新聞を読んでいる人の姿をよく見かけるようになった。なぜ皆が読んでいるかというと、実はこの新聞、無料で配布されているのである。地下鉄の駅入り口で配られたり、街角に立っているボックスに置かれているから、人々は無料でこの新聞を受け取る事ができるのだ。

ページ数は、大手日刊紙に比べると大分少ない。だがローカルニュースや国際欄、ビジネス面からエンターテイメント、タウン情報まで、ニューヨーカーにとって生活に必要な情報は最低限度網羅されているから、一応この新聞を読んでおけばよいか、という人が多いのも頷ける。問題はスポーツ面で、たった2ページしかないから筆者のようなスポーツファンの人間にとっては、物足りないことくらいであろうか。数年前は「デイリー・ニューズ」紙も午後、無料のダイジェスト版を配っていたが、やはり割りに合わなかったのか最近では発行されていないようだ。

そして日刊ではないが、フリーペーパーの代名詞とも言えるのが「ビレッジ・ボイス」であろう。こちらは週刊で、いわゆるタウン情報誌の範疇に入るものであろう。言わば老舗なので、日本でもご存知の方が多いと思う。書店などいろんなところに置かれているので、最も接しやすいNYの地元情報誌であると言っても過言ではないだろう。分量も大変多く、特にクラシファイドの欄は大変役に立つ。ニューヨーク生活の第一歩は、まずはボイスから始まるのである。公式サイト

 


2004年4月6日

オールスター軍団の落とし穴 

松井稼頭央遊撃手のデビューも衝撃的だったが、それ以上に筆者が驚いたのは、UEFAチャンピオンズ・リーグ準々決勝でチェルシー(イングランド)と、そして世界最強軍団のレアル・マドリッド(スペイン)が揃って敗退してしまったことだった。UEFA公式サイト

チェルシーは、同じプレミアシップに所属するロンドンの宿敵、アーセナルと対戦。試合終了間際、ウェイン・ブリッジの決勝ゴールが決まって2戦合計3−2となり、準決勝へコマを進めることになった。チェルシーはこれまで、アーセナル相手に全く勝つことが出来なかった。なにしろ、17戦連続勝ち無しなのである。ここまで勝てないと、チェルシーの選手に「ガナーズ(アーセナルのニックネーム)・コンプレックス」が芽生えても仕方がない。第1戦でもホームで1−1と引き分けてしまい、勝つことが出来なかった。この第2戦はアーセナルの本拠地・ハイバリーで行われたのだが、おそらくは2−0辺りで、プレミアシップで首位を走るアーセナルが快勝すると予想した人が多かったと思う。

試合は、実際その通り推移した。前半終了間際、右サイドからのクロスをアンリがヘッドで落としたところを、最後はゴール前に詰めたレジェスが押し込んでゴール。ボールはチェルシーGKの股間を抜けてゴールネットを揺らした。アーセナルにとっては「予定通り」の先制で1−0となり、このままハーフタイムを迎えた。

今日もまた勝てないのか…嫌なムードで迎えたチェルシーに、後半いきなりチャンスが訪れた。51分、マケレレの強烈なミドルシュートを、アーセナルGKのレーマンがクリアしたが不十分で、こぼれ球をランパードが押し込みゴール。このイコライザーで試合は1−1の同点となり、試合はまったく判らなくなった。両チーム追加点が無いまま試合は進み、迎えた87分、ドラマが待ち受けていた。押し気味に試合を進めていたチェルシーは、ブリッジが左サイドの突破から中央のグジョンセンへパス。これをグジョンセンが絶妙のワンツーを決め、ペナルティ・エリアに走りこんでパスを受けたブリッジが決勝ゴールを叩き込んだのだ。

選手や監督はもちろん、スタジアムへ詰めかけたファン、そしてオーナーのアブラモビッチ氏ら、チームを愛する全ての人々は喜びを爆発させた。もちろん、史上初のCLベスト4進出は嬉しい。しかしそれよりも、今まで苦汁を飲まされ続けてきた憎きライバルに勝てたことが何より嬉しい。この大一番でも、一度はリードを許しながら、最後の最後でひっくり返す事が出来た。今までの苦しみは、この瞬間の喜びの為にあった、今日で全てが報われたのだ。きっとそんな気持ちだったに違いない。

対照的にアーセナルは、悲しみのどん底に突き落とされた。今年のアーセナルは、FAカップ、プレミアシップ、そしてCLの三冠獲得をもくろんでいたのだが、先週はFAカップで敗退し、そしてCLでもまさかのベスト8止まり。チームは、確実に下降線を描いている。このまま立ち直る事が出来なければ、プレミア制覇にも赤信号が灯る事になってしまうだろう。

下降線といえば、レアルはもっと酷い。モナコ相手の準々決勝第1戦を快勝、準決勝進出をほぼ手中に収めたかに見えたが、この第2戦では1対3と敗れてしまったのだ。合計スコアは5-5だが、アウェイゴールのルールによりモナコが「大金星」を挙げる事になった。レアルは、デービッド・ベッカムこそ警告累積で欠いてはいたが、その他のオールスター・メンバー達は不動の布陣を敷いていた。それなのに…一寸先は闇、まさにそんな形の結末であった。CL制覇がノルマとも言われる超豪華軍団だけに、そのショックは大きいであろう。しかもアーセナルやミランといったクラブに敗れた訳では無いのだ。

でも、見かけだけは豪華でも、やはりサッカーチームには必要な戦力がある。今のレアルはそういう要素に欠けている、という意見は根強い。参考記事

でもこれは、何もサッカーだけに限った話ではあるまい。野球だってそうだ。巨人やニューヨーク・ヤンキースの試合が今年味気ないものに感じるのは、メインディッシュばかり並ぶようなディナーにうんざりしている面があるんだと思う。A-Rod、ジアンビー、シェフィールドそして松井秀喜…まるで「ローストビーフ、ヒレかつ、フライドチキンに最後はスペアリブ」みたいな感じがする。昔のヤンキースは、こんな感じではなかった。もっとコクのある野球をしていたし、チームにはピリッと辛い山椒のような仕事人がいた。今のヤンキースやレアルには、メリハリが欠けている。

映画なら、主演級のオールスター俳優ばかり並べたって良い作品ができるとは限らない。こんな事は自明の理なのだが、なぜかスポーツだと、その辺を勘違いしてしまう人々が多いようだ。レアル、巨人、ヤンキース…ところは違え、オールスター軍団が陥りやすい落とし穴は、実は同じような所に掘られているものなのかもしれない。

(文中敬称略)


2004年4月5日

バラエティ番組 

新しいプロ野球シーズンが始まったが、相変わらず巨人戦の視聴率は低いという。巨人は阪神タイガースとの3連戦に全て敗れてしまった。だから阪神の地元である関西では視聴率が高いが、巨人ファンの多い関東では伸び悩んだのだという。

なんと頭が悪い話だろう。もう多くのファンが気付いているように、巨人戦というのはスポーツ番組ではない、あれは一種の「バラエティ番組」である。巨人の成績の良し悪しも、要するに視聴率を取る為の手段として言われているだけであって、実のところは優勝しようがしまいが、率が取れればテレビ局的にはOKなのだ。

巨人の選手達はスポーツ選手でありながら、一種のテレビタレントでもある。言うなればスポーツ芸人である。だから「ローズや小久保などの強力な新加入選手が入ったのに、なぜ人気が低迷するのか」と言うが、当たり前の話だ。小久保やローズは、パ・リーグの出身である。お笑いで言うと「松竹芸能」の出身者が、東京のテレビ局で制作されている番組の為に起用されるようなものだ。彼らは、実力はあっても世間一般的な人気は無い。もともと全国区でないのだ。清原もパ・リーグ出身だったが、あの人はキャラが立っているからイケたのである。松竹でいうと、鶴瓶みたいなものだ。だから小久保やローズは、野球の成績は申し分ないが、視聴率にはあまり貢献しないだろう。

テレビの世界では、視聴率が取れない番組は悪だという。じゃあ阪神がらみの視聴率が高いのなら、巨人戦も阪神中心の構成にすればよいのだ。日テレはそれではプライド丸つぶれかもしれないが、率が取れれば局内にも申し訳が立つはずだ。それに系列の読売テレビには、「トラトラタイガース」という阪神の応援番組がある。あのノリを、巨人戦でずっとやれば良いのだ。相手が阪神でなくても関係無い。それに、番組の中にもっと刺激的なコンテンツを含めばよい。金本と清原が、試合前に大阪弁で怒鳴りあいすればド迫力だろう。

あるいは巨人のGMに、横山ノックが就任するのもいい。セクハラで府知事の座を追われたノックが、いま巨人のGMとして大阪の象徴・タイガースに復讐劇を仕掛けるのだ。そのノックを征伐すべく、かつての盟友・上岡龍太郎が阪神ベンチに入り、ノックの弱点をいろいろ岡田監督に伝授するのである。

どうせ試合の勝敗より視聴率が気になるのなら、なりふり構うな、何でもやれ。それで安定した数字を取れるようになってから、じっくり腰を据えた野球中継をやれば良い。

(文中敬称略)


2004年4月4日

新聞の日曜版 

アメリカの新聞は安い。ニューヨークでは様々な新聞が発行されているが、多くの人に読まれているメジャーなのは一般紙の「ニューヨーク・タイムズ」「デイリー・ニューズ」そして「ニューヨーク・ポスト」というところだろう。しかし一番高い「タイムズ」でも1ドル。ごく最近までは75セントだった。「デイリー」は50セント、「ポスト」に至ってはわずか25セントに過ぎない。25セント、日本円にして30円足らずである。そんな新聞、日本ではありえないだろう。それで薄っぺらい新聞かというと、決してそんな事は無い。いわゆるゴシップ記事みたいなのが多く大衆的な内容だが、なかなか読み応えのある紙面構成なのである。

よく日本では「一流のビジネスマンやインテリは専ら『タイムズ』や、経済紙の『ウォールストリート・ジャーナル』を読む」といわれている。確かにそういう傾向があるのは確かだが、「ポスト」のようなタブロイド紙を愛好する人もなかなか多い。大学で経済学を教えている教授が、アタッシェ・ケースの中からやおら「ポスト」を取り出して読んでいる光景を見たことがある。

さてアメリカの新聞といえば、なんと言っても日曜版が有名だろう。とにかく、分量が圧倒的なのである。特に「ニューヨーク・タイムズ」の日曜版は、価格も3ドル50セントと一気に上がるだけあって、何時もの数倍のページ数でどどど、と迫ってくる。ニューズスタンドで買えば、家まで持って帰ってくるのが大変な重さだ。そこで我が家では、土・日だけ「タイムズ」を購読している。このウィークエンドだけの宅配を頼んでいる人は結構多い。

また各紙の日曜日版には、クーポンがつくので主婦に喜ばれている。いろんな日曜生活用品が50セント〜1ドル引きになるクーポンがどっさり付いているので、これを切り取って買い物する「賢い奥さん」が多いのだ。そのクーポンは駅売りで買うと日曜日版に入っているけど、しかし宅配では前倒しで、土曜日の新聞に入れられている。

もちろんスポーツ面の充実度も、新聞の売上の大きな影響を持っている。男性読者はやはりスポーツ面が好きなのだ。中でも「デイリー」と「ポスト」はスポーツ記事を大きな売り物にしていると言っても良いだろう。日本でも翻訳本が出ているマイク・ルピカは、デイリーの名物コラムニストである。

他にも日刊紙はあるし、各国語の新聞も多く発行されている。そんなバラエティ豊かな紙面の中に、ニューヨークの「いま」が見えると言っても過言では無いだろう。

(文中敬称略)


2004年4月3日

サマータイム

今日で冬時間は終わり、明日からサマータイム(DST)に入る。夜中のうちに、1時間時計が進むのだ。冬は、日本と米国東部時間の時差は14時間だが、サマータイムに入ると13時間に変更される。

この感覚は、やはりサマータイムの無い日本人にはなかなか理解しにくいものがある。やはり「1時間損した」という風に受け取る人が多いようだ。とはいえ、冬になるときまた時計を戻すから、トータルで考えると同じことなのだけれど。

パソコンは本当にえらいと思うのは、サマータイム導入に合わせてちゃんと自分で時間を設定してくれる事だ。時計やビデオデッキは、自分で時間を設定しなおす必要がある。

サマータイムといえば、やはりサーカスの「ミスター・サマータイム」である(何が『やはり』だ)。都会的なコーラスを聴かせてくれる男女4人のグループだったが、今でも現役のようである。凄いなぁ。

(文中敬称略)

 

 

 


もっと過去のコラム

 

2004年3月29〜4月2日 2004年2月29〜3月3日 2004年1月〜2月2日  
2004年3月24〜28日 2004年2月23〜27日    
2004年3月19〜23日 2004年2月18〜22日    
2004年3月14〜18日 2004年2月13〜17日    
2004年3月9〜13日 2004年2月8〜12日    
2004年3月4〜8日 2004年2月3〜7日